太平洋横断往復航海の準備と実際 (その2)
2016-10-10
2016年10月10日(日) 11時 記
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その2)
目 次
1.ヨットの紹介 (2016年10月5日のブログ参照)
= 本日紹介分の目次 =
2.船体の準備
============
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
2. 船体の準備
1) セール新調
2014年3月に、三浦海岸の前田セールさんで、メインセールとジブセールを新調した。セールクロスは、太平洋横断に使用することを告げて、前田さんに決めてもらった。
ダブルステッチで丁寧に仕上げてもらった。
丈夫なセールに仕上がっていて、航海中セールのトラブルは皆無だった。
安価で製作して頂き感謝している。

(1) ジブセール : ファーリングジェノア、130%

(2) インナーステースル : ストームジブセールをセットした。
インナーステーを後付けで取付けて、ファーラーを取付けた。
セールはファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブを持っていたので、それをファーラー用に改造して使用した。


どうしてもストームジブが欲しかったのでインナーステーを取付けた。
ファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブは、荒天時にそんな悠長なことはしてられないので使用できないと思った。
しかし、今回の航海でストームジブが無かったら困ったかと言うと、そうではなかったように思う。
自分のヨットは、強風時はクローズドリーチ(クローズホールドからアビームの間)ではジブセールが無いと走らない。
それならと、風速17~18 m/s の時に、2ポイントリーフのメインセールに加えてストームジブを出すと、オーバーキャンバスで走れなかった。
今回ストームジブがあって良かったと思ったのは、風速13~14 m/s くらいの時にクローズドリーチで走った時で、ジブセールをフット長さの40 % ほど出して走るより、ストームジブで走った方が乗り心地が良かった。
これは、スピードが落ちたために波当たりがソフトになったためと思うが、長時間激しい波当たりを受けながら走ることは船体と乗員に取って好ましくない。
インナーステーを取り付けたために、ランナー(ランニングバックステー)も取り付けた。
ランナーはインナーステースル(ストームジブ)を使う時に、マストのインナーステー取り付け部を風上後方に引っ張るために使うのだが、使わない時は結構邪魔になった。
使わない時の固縛場所によっては、クローズホールドの時にジブセールに干渉し、追っ手の時はブームに当たるので、その都度固縛位置を変えた。
(3) メインセール

1 ポイントリーフ : ラフの長さの 80 %

1 ポイントに落とすことでかなりの風速範囲で安心していられた。
2 ポイントリーフ : ラフの長さの 50 %

2 ポイントリーフのメインセールは有効で、強風下の風下航でも安心していられたし、風向に対して 70 ~ 80 度の角度で逆ジブを使わずにヒーブツーすることもできた。
2 ポイントリーフは、形状は異なるがストームトライスルとほぼ同じセール面積になるので、相当な風でもヒーブツーで凌ぐことが出来る感触を得た。
(4) メインセールとジブセールの組み合わせ



ジブセールのフットに、フットの長さの 40 % まで 10 % きざみで印を付けておいたので、セール面積を簡単に把握出来て良かった。

メインセール、ジブセールとも最小の組み合わせだが、クローズドリーチでは風速15 m/s くらいが限度のように感じられた。
・リーフ方法 :
ラフ側、リーチ側を別々に固定する通常方式。
シングルライン方式を採用して、コクピットでリーフ作業をしたかったが、ロープの取り回しが困難だったので止めた。
メインセールのラフスライダーに抵抗の少ないタイプを使用して、シングルライン方式が無理なく採用出来れば、追手で走らせたままコクピットでリーフ作業ができるので、安全性が飛躍的に向上する。
追手で走っている時は、風が強くなっていることに気が付くのが遅れがちで、リーフしようと思った時はすでに波も高くなっていることが多いので、ヨットを停めて横っ腹を波に向けて、マストまで行って行うリーフ作業は、大変かつ危険を伴う。
2) ハードドジャー取付け
日本周航時はソフトドジャーを取付けていたが、ドジャーの横を通る時にハンドグリップが無かったので怖かった。
何とかソフトドジャートップの横にハンドグリップを取付けることを検討したが、かなり面倒な改造になるので、思い切って新たにハードドジャーを造ってもらった。
簡易雌型の製作。


ドジャートップ全周にハンドグリップを取付けたことにより、安全性が飛躍的に向上した。

サンフランシスコ、ハワイで現地のヨットを見ると、ソフトドジャーでもほぼ全てにハンドグリップが取付けてあった。
今回の航海では、ハンドグリップさえあればソフトドジャーでも問題無かったが、それはあくまでも結果論で、激しく波をかぶったり、横倒しになった時は、ソフトドジャーは変形するかもしれないと思う。
3) ジャイブプリベンター取付け
1/4 テークルで左右舷別々に取付けて、コクピットまでリードした。

強風時の真追手でも安心していられ、強風下のジャイブも安全に行えて非常に有効だった。
4) 自動操舵装置
(1) ウインドベーン : 米国Scanmar製、Monitor



ウインドベーンは非常に有効で、全航海時間の 98 % ほど使用した。
強風時の真追手、クオーターリーでも全く不安なく使用できた。また、荒天時にヒーブツー状態で凌いだ時にも使用できた。
唯一弱点は、風が 4 m/s 以下になると作動が不安定になり使えなくなることだが、幸いそれほど長い間弱風状態が続くことはなかった。
エアベーンの角度調整は船尾まで行かないと出来ないが、角度調整をキャビン内から長いロープを使って出来るようにしておけば、船尾まで行かずに済むので、波をかぶる恐れが無くなり、安全性が増すと同時に快適になる。

ウインドベーン無くして長距離の単独航海は不可能と感じた。
(2) オートパイロット : Raymarine 製 ST - 2000 x 4 台

日本周航時から信頼性はかなり低く、すぐに壊れるので、頻繁に修理に出していた。
1 台目は出航そうそうに、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になり、2 台目もサンフランシスコ到着のかなり前に、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になった。
3 台目が一時作動が不安定になったが、何とか帰国まで使えた。
弱風時や出入港時等エンジンを使う時は、オートパイロットは必需品だった。
壊れ易いので、予備をたくさん積むことになった。
5) 落水防止対策
ソーラーパネルアーチの支柱を利用して、船尾部とコクピット横にロープを巡らした。

落水の恐怖感は大幅に減少し、立ち小便をする時も安心だった。
6) スプレッダーライト(両舷)
夜間作業が多く必需品だった。
夜間、ウインドベーンのエアベーンを調整する時に、船尾のコクピット周りに照明が必要だった。
ソーラーパネルの裏面に作業灯を取付けることが出来たのだが、出航前のテスト航海の時には必要性に気が付かなかった。
7) 清水タンク増量 : 70 L (オリジナル) ---> 120 L
オリジナルは 70 リッターだったが、日本周航中にすぐに無くなることに気が付いたので 120 リッターに増量した。
8) 燃料タンク増量 : 30 L (オリジナル) ---> 110 L
オリジナルは 30 リッターと小さかったので、新艇購入時に 60 リッターにしたが、まだ小さかったので、110 リッターに増量した。
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その2)
目 次
1.ヨットの紹介 (2016年10月5日のブログ参照)
= 本日紹介分の目次 =
2.船体の準備
============
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
2. 船体の準備
1) セール新調
2014年3月に、三浦海岸の前田セールさんで、メインセールとジブセールを新調した。セールクロスは、太平洋横断に使用することを告げて、前田さんに決めてもらった。
ダブルステッチで丁寧に仕上げてもらった。
丈夫なセールに仕上がっていて、航海中セールのトラブルは皆無だった。
安価で製作して頂き感謝している。

(1) ジブセール : ファーリングジェノア、130%

(2) インナーステースル : ストームジブセールをセットした。
インナーステーを後付けで取付けて、ファーラーを取付けた。
セールはファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブを持っていたので、それをファーラー用に改造して使用した。


どうしてもストームジブが欲しかったのでインナーステーを取付けた。
ファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブは、荒天時にそんな悠長なことはしてられないので使用できないと思った。
しかし、今回の航海でストームジブが無かったら困ったかと言うと、そうではなかったように思う。
自分のヨットは、強風時はクローズドリーチ(クローズホールドからアビームの間)ではジブセールが無いと走らない。
それならと、風速17~18 m/s の時に、2ポイントリーフのメインセールに加えてストームジブを出すと、オーバーキャンバスで走れなかった。
今回ストームジブがあって良かったと思ったのは、風速13~14 m/s くらいの時にクローズドリーチで走った時で、ジブセールをフット長さの40 % ほど出して走るより、ストームジブで走った方が乗り心地が良かった。
これは、スピードが落ちたために波当たりがソフトになったためと思うが、長時間激しい波当たりを受けながら走ることは船体と乗員に取って好ましくない。
インナーステーを取り付けたために、ランナー(ランニングバックステー)も取り付けた。
ランナーはインナーステースル(ストームジブ)を使う時に、マストのインナーステー取り付け部を風上後方に引っ張るために使うのだが、使わない時は結構邪魔になった。
使わない時の固縛場所によっては、クローズホールドの時にジブセールに干渉し、追っ手の時はブームに当たるので、その都度固縛位置を変えた。
(3) メインセール

1 ポイントリーフ : ラフの長さの 80 %

1 ポイントに落とすことでかなりの風速範囲で安心していられた。
2 ポイントリーフ : ラフの長さの 50 %

2 ポイントリーフのメインセールは有効で、強風下の風下航でも安心していられたし、風向に対して 70 ~ 80 度の角度で逆ジブを使わずにヒーブツーすることもできた。
2 ポイントリーフは、形状は異なるがストームトライスルとほぼ同じセール面積になるので、相当な風でもヒーブツーで凌ぐことが出来る感触を得た。
(4) メインセールとジブセールの組み合わせ



ジブセールのフットに、フットの長さの 40 % まで 10 % きざみで印を付けておいたので、セール面積を簡単に把握出来て良かった。

メインセール、ジブセールとも最小の組み合わせだが、クローズドリーチでは風速15 m/s くらいが限度のように感じられた。
・リーフ方法 :
ラフ側、リーチ側を別々に固定する通常方式。
シングルライン方式を採用して、コクピットでリーフ作業をしたかったが、ロープの取り回しが困難だったので止めた。
メインセールのラフスライダーに抵抗の少ないタイプを使用して、シングルライン方式が無理なく採用出来れば、追手で走らせたままコクピットでリーフ作業ができるので、安全性が飛躍的に向上する。
追手で走っている時は、風が強くなっていることに気が付くのが遅れがちで、リーフしようと思った時はすでに波も高くなっていることが多いので、ヨットを停めて横っ腹を波に向けて、マストまで行って行うリーフ作業は、大変かつ危険を伴う。
2) ハードドジャー取付け
日本周航時はソフトドジャーを取付けていたが、ドジャーの横を通る時にハンドグリップが無かったので怖かった。
何とかソフトドジャートップの横にハンドグリップを取付けることを検討したが、かなり面倒な改造になるので、思い切って新たにハードドジャーを造ってもらった。
簡易雌型の製作。


ドジャートップ全周にハンドグリップを取付けたことにより、安全性が飛躍的に向上した。

サンフランシスコ、ハワイで現地のヨットを見ると、ソフトドジャーでもほぼ全てにハンドグリップが取付けてあった。
今回の航海では、ハンドグリップさえあればソフトドジャーでも問題無かったが、それはあくまでも結果論で、激しく波をかぶったり、横倒しになった時は、ソフトドジャーは変形するかもしれないと思う。
3) ジャイブプリベンター取付け
1/4 テークルで左右舷別々に取付けて、コクピットまでリードした。

強風時の真追手でも安心していられ、強風下のジャイブも安全に行えて非常に有効だった。
4) 自動操舵装置
(1) ウインドベーン : 米国Scanmar製、Monitor



ウインドベーンは非常に有効で、全航海時間の 98 % ほど使用した。
強風時の真追手、クオーターリーでも全く不安なく使用できた。また、荒天時にヒーブツー状態で凌いだ時にも使用できた。
唯一弱点は、風が 4 m/s 以下になると作動が不安定になり使えなくなることだが、幸いそれほど長い間弱風状態が続くことはなかった。
エアベーンの角度調整は船尾まで行かないと出来ないが、角度調整をキャビン内から長いロープを使って出来るようにしておけば、船尾まで行かずに済むので、波をかぶる恐れが無くなり、安全性が増すと同時に快適になる。

ウインドベーン無くして長距離の単独航海は不可能と感じた。
(2) オートパイロット : Raymarine 製 ST - 2000 x 4 台

日本周航時から信頼性はかなり低く、すぐに壊れるので、頻繁に修理に出していた。
1 台目は出航そうそうに、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になり、2 台目もサンフランシスコ到着のかなり前に、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になった。
3 台目が一時作動が不安定になったが、何とか帰国まで使えた。
弱風時や出入港時等エンジンを使う時は、オートパイロットは必需品だった。
壊れ易いので、予備をたくさん積むことになった。
5) 落水防止対策
ソーラーパネルアーチの支柱を利用して、船尾部とコクピット横にロープを巡らした。

落水の恐怖感は大幅に減少し、立ち小便をする時も安心だった。
6) スプレッダーライト(両舷)
夜間作業が多く必需品だった。
夜間、ウインドベーンのエアベーンを調整する時に、船尾のコクピット周りに照明が必要だった。
ソーラーパネルの裏面に作業灯を取付けることが出来たのだが、出航前のテスト航海の時には必要性に気が付かなかった。
7) 清水タンク増量 : 70 L (オリジナル) ---> 120 L
オリジナルは 70 リッターだったが、日本周航中にすぐに無くなることに気が付いたので 120 リッターに増量した。
8) 燃料タンク増量 : 30 L (オリジナル) ---> 110 L
オリジナルは 30 リッターと小さかったので、新艇購入時に 60 リッターにしたが、まだ小さかったので、110 リッターに増量した。
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