太平洋横断往復航海の準備と実際 (その3)
2016-10-11
2016年10月11日(火) 17時 記
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その3)
目 次
1.ヨットの紹介 (2016年10月 5日のブログ参照)
2.船体の準備 (2016年10月10日のブログ参照)
= 本日紹介分の目次 =
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
============
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
3. 電源設備
電源設備系統図

1) バッテリー
古河電池製 FB9000-125D31R x 4 台
オリジナルは2台だったが、2 台増設して合計 4 台にした。
チャートテーブル下に増設 2 台分の格納スペースを作った。


オリジナルの2台は、右舷クオーターバースの下に置かれていたので、増設2台を隣接して置くことが出来た。

バッテリーのタイプは、国産の大型乗用車に使われている普通の開放型鉛バッテリー。
ただし、見た目密閉されているので、大きくヒールしても液漏れはしないはず。
バッテリー液の補充は必要なし(取説では補充禁止と記されている)。
サービスバッテリー群 3 台、エンジン始動用 1 台の 2 グループに分けた。
2) ソーラーパネル
ケー・アイ・エス(KIS)製 GT85 (90W) x 4 枚

合計 360 Wで、かんかん照りの日中は発電電流が20Aほどになり、電力消費を賄いつつ充電出来た。しかし、薄日や曇りの日も多く、夕方までにバッテリーが満充電になることは稀で、常に節電に努めていた。
曇りや雨の日は全く不足したので、昼間は音楽を聴くことを控えたり、夜は冷蔵庫を止めたり、航海灯を消した。
また、ソーラーパネルの設置角度はほぼ水平なので、快晴の日でも午前9時ころまでと午後 3 時ころ以降は太陽光の入射角が低く発電量は多くない。
今回の電源設備の評価として点数を付けるなら、70 点くらい。
節電に努めれば何とかなるという程度で、決して満足の行くものではなかったが、バッテリー充電のためだけにエンジンを回したことはほとんど無かったので、ぎりぎり合格と言ったところ。
電源をソーラーパネルに頼るなら、もう少しパネルの面積を増やす必要がある。
ハードドジャートップにあと 100 W くらい追加設置出来るが、ここはメインセールの影になることが多いのであまり期待できないかもしれない
他の発電設備も考えたが、風力発電機は音がうるさいと聞いていたことと、動くものは壊れるのではないかと思い採用しなかった。
DuoGen という、風力と水力両用の発電機が良いと聞いていたが、やはり動くものであることと、かなり高価で、水力利用時の抵抗が気になったので採用しなかった。DuoGen のホームページによると、水力利用時の速力低下は 0. 5 ノットとのことだが、平均速力が 4. 5 ノット程度のものが、4. 0 ノットにダウンすることは、影響が大き過ぎると思った。
3) 充電コントローラー

(1) サービスバッテリー群 3 台充電用
福島電気製 SPC-005 (MPPT 制御方式) x 1 台
MPPT 方式は、充電効率が PWM 方式に比べて良いとのことだったので、高価でサイズが大きかったが採用した。
比較する対象が無かったので、どれだけ充電効率が良かったかは不明だが、パソコンで充電状況を数値でモニター出来たので節電の参考にした。
(2) エンジン始動用バッテリー 1台充電用
未来舎製 PV1212C1A (PWM 制御方式) x 1 台
4) バッテリー残量計 : ドイツの Votronic 社製。
バッテリー残量計は、日本周航時から装備していた。
バッテリー電流の流入量と流出量を積算して、バッテリーの残量を数値で表示してくれるので、分かりやすくて良かった。
5) バッテリー充電器 : 未来舎製 CH-1225GTD (25 A/hr) x 1 台
6) インバーター : 未来舎製 FL-S126 (125 W) x 2 台
パソコン、プリンターの電源、双方向無線電話装置、スマートフォン、カメラのバッテリーの充電用。
7) シガーライター型 12 V 電源アウトレット x 6 ヶ所
イリジウム衛星電話機の充電、インバーター、冷蔵庫、掃除機などに使用。
12 V 電源は結構必要だが、いざ取り出そうとすると簡単ではない。
4. 航海計器
たくさんの航海計器、無線機、法定備品などを取り付ける必要があったので、『壁』 が必要だった。




ハードドジャー内のナビゲーションスペース。
荒天時はここで外を見ていた。中央の表示器は、パソコンのサブモニターでチャートが表示される。

1) GPS
(1) パソコンの USB ポートに接続して使う簡易タイプ x 3
パソコンの電子チャート上に自艇位置、スピードを表示するのに使用。
(2) Magellan 社製ハンディータイプ x 1 (予備)
(3) 国際 VHF (DSC) 用 x 1
(4) AIS 用 x 1
2) AIS
(1) 送受信機 : キューシンク製 AIS-7000
パソコンに接続し、OpenCPN で表示される電子チャート上に、自艇と他船を表示。
他船のアイコンをクリックすると、その船の情報、船名、船籍、船種、サイズ、目的地、進路、スピードなどが表示される。さらに、その船と自艇が最接近するまでの時間と、その時の距離も表示される。
衝突の危険を感じたら、船名が分かるので、VHFで呼び掛けることが出来る。
他船接近の警報が無かったが、それがあればパーフェクトであった。
(2) アンテナ
AIS の使用周波数帯はVHF と同じなので、両者のアンテナは共用できる。
しかし、共用するには、自動アンテナ切替え器が必要であり、高価なのでそれぞれ専用のアンテナを装備した。
それぞれ専用のアンテナを装備する時は、VHF 発信時の強力電波でAIS を壊してしまう恐れがあるので、両者を水平距離で 10 m 以上離す必要があるとのことだった。
狭いヨットの上では不可能なので、AIS 用をマストトップに、VHF用をソーラーパネルアーチに取付けて、高さ方向でお互いの干渉を避けた。
AIS のアンテナをマストトップに取り付けたので、半径 60 ~ 70 海里をカバー出来て、安心感抜群だった。

3) レーダー : 古野電気製 1715
濃霧にはほとんど遭遇しなかったので使用頻度は低かった。
消費電力が大きく、アラームは設定しても波に反応して頻繁に誤作動するなど、使い勝手は良くなかった。AIS で十分だった。
4) 風向・風速計 : Raymarine 製 T101 Wind System (ワイヤレスタイプ)
表示器を持ち運べるので、キャビン内でもデッキでも見ることができて便利だった。風速を数値で知ることができたので、リーフのタイミングなどを客観的に判断できた。
5) 航海灯 : LED タイプに変更。
それでも、夜間の消費電力をおさえるために航海灯を消した。
AIS で半径 60 ~ 70 海里以内に他船がいないことが確認できれば、2 ~ 3 時間は航海灯を消しても安心していられた。
5. 無線設備
1) アマチュア無線
(1) 無線機
・送受信機 : ICOM製 IC-7100M (50W)
タッチパネル式で、無線機になじみの無い素人でも使いやすかった。
・受信専用機 : ALINCO製 DX-R8
アマチュア無線の免許を取得する前に購入したため受信専用。
気象ファクスの受信専用機として使用。
(2) アンテナ
送受信機用アンテナ : バックステー兼用
インシュレーター : HAYN 製 Hi - MOD (RISS07) x 2



オートアンテナチューナー : ICOM 製 AH-4

オートアンテナチューナーは、アンテナ線がデッキを貫通してはいけないと教えられたので、ソーラーパネルの裏面に取付けた。
受信専用機用アンテナ : APEX RADIO 製 303WA-2 (1. 8 m のホイップアンテナ)

1. 8 m のホイップアンテナでも、気象ファクスの周波数帯はほぼ受信できた。
(3) アース
電波を飛ばすにはアースが必要とのことだった。
いろいろな方法があるようだったが、自艇にはスペースの問題で採用出来なかったり、船体に穴を開ける等不安を伴うものだったので採用しなかった。
代わりに、かつてマグロ船の通信長をしていた無線のプロのヨット乗りの方から教えて頂いた方法を採用した。
船上の全ての金属、マスト、ステー、パルピット、ライフライン、トウレール、ソーラーパネルアーチ、エンジン等全てをデッキ裏で電線でつないで、一つの大きな金属の塊を作ってアースとした。
電波は結構飛んだと思う。

2) 国際VHF無線機 : ICOM 製 M504J (25W)
アンテナは、ソーラーパネルアーチに取付け。
3) イリジウム衛星電話機 : Iridium GO


自分が普段使っているスマートフォンが、Wi - Fi の船内 LAN でつながってハンドセットになり、電話もメールも陸に居る時と同じ感覚で出来た。
本体は米国の、PredictWind 社から購入し、通信契約はやはり米国の SatphoneStore 社と結んだ。
詳細は、PredictWind と SatphoneStore のホームページ参照。
通信契約の内容は、「GO Unlimited」 という料金プランで、データ使い放題で、無料通話が5分間分付いて、税込で 1ヶ月 130 ドルほど。
ただし電話は、無料通話分を超えた時の通話料が 1 分間 10 ドルほどと、かなり高額だったので、ほとんど使わなかった。
契約した料金プランの、データ使い放題は、航跡自動表示サービスを依頼する時は、位置情報を SMS で頻繁に自動発信するので必要。
最近 SatphoneStore 社のホームページをのぞくと、料金プランの 「GO Unlimited」 は、データ使い放題で、無料通話が 150 分間分と大幅に増えていて、しかも、150 分の無料通話分を超えた後の通話料は、1 分間 1. 09 ドルと信じられないほど安くなっているのに、料金は税込で 1 ヶ月 130 ドルほどと変わってなかった。
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その3)
目 次
1.ヨットの紹介 (2016年10月 5日のブログ参照)
2.船体の準備 (2016年10月10日のブログ参照)
= 本日紹介分の目次 =
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
============
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
3. 電源設備
電源設備系統図

1) バッテリー
古河電池製 FB9000-125D31R x 4 台
オリジナルは2台だったが、2 台増設して合計 4 台にした。
チャートテーブル下に増設 2 台分の格納スペースを作った。


オリジナルの2台は、右舷クオーターバースの下に置かれていたので、増設2台を隣接して置くことが出来た。

バッテリーのタイプは、国産の大型乗用車に使われている普通の開放型鉛バッテリー。
ただし、見た目密閉されているので、大きくヒールしても液漏れはしないはず。
バッテリー液の補充は必要なし(取説では補充禁止と記されている)。
サービスバッテリー群 3 台、エンジン始動用 1 台の 2 グループに分けた。
2) ソーラーパネル
ケー・アイ・エス(KIS)製 GT85 (90W) x 4 枚

合計 360 Wで、かんかん照りの日中は発電電流が20Aほどになり、電力消費を賄いつつ充電出来た。しかし、薄日や曇りの日も多く、夕方までにバッテリーが満充電になることは稀で、常に節電に努めていた。
曇りや雨の日は全く不足したので、昼間は音楽を聴くことを控えたり、夜は冷蔵庫を止めたり、航海灯を消した。
また、ソーラーパネルの設置角度はほぼ水平なので、快晴の日でも午前9時ころまでと午後 3 時ころ以降は太陽光の入射角が低く発電量は多くない。
今回の電源設備の評価として点数を付けるなら、70 点くらい。
節電に努めれば何とかなるという程度で、決して満足の行くものではなかったが、バッテリー充電のためだけにエンジンを回したことはほとんど無かったので、ぎりぎり合格と言ったところ。
電源をソーラーパネルに頼るなら、もう少しパネルの面積を増やす必要がある。
ハードドジャートップにあと 100 W くらい追加設置出来るが、ここはメインセールの影になることが多いのであまり期待できないかもしれない
他の発電設備も考えたが、風力発電機は音がうるさいと聞いていたことと、動くものは壊れるのではないかと思い採用しなかった。
DuoGen という、風力と水力両用の発電機が良いと聞いていたが、やはり動くものであることと、かなり高価で、水力利用時の抵抗が気になったので採用しなかった。DuoGen のホームページによると、水力利用時の速力低下は 0. 5 ノットとのことだが、平均速力が 4. 5 ノット程度のものが、4. 0 ノットにダウンすることは、影響が大き過ぎると思った。
3) 充電コントローラー

(1) サービスバッテリー群 3 台充電用
福島電気製 SPC-005 (MPPT 制御方式) x 1 台
MPPT 方式は、充電効率が PWM 方式に比べて良いとのことだったので、高価でサイズが大きかったが採用した。
比較する対象が無かったので、どれだけ充電効率が良かったかは不明だが、パソコンで充電状況を数値でモニター出来たので節電の参考にした。
(2) エンジン始動用バッテリー 1台充電用
未来舎製 PV1212C1A (PWM 制御方式) x 1 台
4) バッテリー残量計 : ドイツの Votronic 社製。
バッテリー残量計は、日本周航時から装備していた。
バッテリー電流の流入量と流出量を積算して、バッテリーの残量を数値で表示してくれるので、分かりやすくて良かった。
5) バッテリー充電器 : 未来舎製 CH-1225GTD (25 A/hr) x 1 台
6) インバーター : 未来舎製 FL-S126 (125 W) x 2 台
パソコン、プリンターの電源、双方向無線電話装置、スマートフォン、カメラのバッテリーの充電用。
7) シガーライター型 12 V 電源アウトレット x 6 ヶ所
イリジウム衛星電話機の充電、インバーター、冷蔵庫、掃除機などに使用。
12 V 電源は結構必要だが、いざ取り出そうとすると簡単ではない。
4. 航海計器
たくさんの航海計器、無線機、法定備品などを取り付ける必要があったので、『壁』 が必要だった。




ハードドジャー内のナビゲーションスペース。
荒天時はここで外を見ていた。中央の表示器は、パソコンのサブモニターでチャートが表示される。

1) GPS
(1) パソコンの USB ポートに接続して使う簡易タイプ x 3
パソコンの電子チャート上に自艇位置、スピードを表示するのに使用。
(2) Magellan 社製ハンディータイプ x 1 (予備)
(3) 国際 VHF (DSC) 用 x 1
(4) AIS 用 x 1
2) AIS
(1) 送受信機 : キューシンク製 AIS-7000
パソコンに接続し、OpenCPN で表示される電子チャート上に、自艇と他船を表示。
他船のアイコンをクリックすると、その船の情報、船名、船籍、船種、サイズ、目的地、進路、スピードなどが表示される。さらに、その船と自艇が最接近するまでの時間と、その時の距離も表示される。
衝突の危険を感じたら、船名が分かるので、VHFで呼び掛けることが出来る。
他船接近の警報が無かったが、それがあればパーフェクトであった。
(2) アンテナ
AIS の使用周波数帯はVHF と同じなので、両者のアンテナは共用できる。
しかし、共用するには、自動アンテナ切替え器が必要であり、高価なのでそれぞれ専用のアンテナを装備した。
それぞれ専用のアンテナを装備する時は、VHF 発信時の強力電波でAIS を壊してしまう恐れがあるので、両者を水平距離で 10 m 以上離す必要があるとのことだった。
狭いヨットの上では不可能なので、AIS 用をマストトップに、VHF用をソーラーパネルアーチに取付けて、高さ方向でお互いの干渉を避けた。
AIS のアンテナをマストトップに取り付けたので、半径 60 ~ 70 海里をカバー出来て、安心感抜群だった。

3) レーダー : 古野電気製 1715
濃霧にはほとんど遭遇しなかったので使用頻度は低かった。
消費電力が大きく、アラームは設定しても波に反応して頻繁に誤作動するなど、使い勝手は良くなかった。AIS で十分だった。
4) 風向・風速計 : Raymarine 製 T101 Wind System (ワイヤレスタイプ)
表示器を持ち運べるので、キャビン内でもデッキでも見ることができて便利だった。風速を数値で知ることができたので、リーフのタイミングなどを客観的に判断できた。
5) 航海灯 : LED タイプに変更。
それでも、夜間の消費電力をおさえるために航海灯を消した。
AIS で半径 60 ~ 70 海里以内に他船がいないことが確認できれば、2 ~ 3 時間は航海灯を消しても安心していられた。
5. 無線設備
1) アマチュア無線
(1) 無線機
・送受信機 : ICOM製 IC-7100M (50W)
タッチパネル式で、無線機になじみの無い素人でも使いやすかった。
・受信専用機 : ALINCO製 DX-R8
アマチュア無線の免許を取得する前に購入したため受信専用。
気象ファクスの受信専用機として使用。
(2) アンテナ
送受信機用アンテナ : バックステー兼用
インシュレーター : HAYN 製 Hi - MOD (RISS07) x 2



オートアンテナチューナー : ICOM 製 AH-4

オートアンテナチューナーは、アンテナ線がデッキを貫通してはいけないと教えられたので、ソーラーパネルの裏面に取付けた。
受信専用機用アンテナ : APEX RADIO 製 303WA-2 (1. 8 m のホイップアンテナ)

1. 8 m のホイップアンテナでも、気象ファクスの周波数帯はほぼ受信できた。
(3) アース
電波を飛ばすにはアースが必要とのことだった。
いろいろな方法があるようだったが、自艇にはスペースの問題で採用出来なかったり、船体に穴を開ける等不安を伴うものだったので採用しなかった。
代わりに、かつてマグロ船の通信長をしていた無線のプロのヨット乗りの方から教えて頂いた方法を採用した。
船上の全ての金属、マスト、ステー、パルピット、ライフライン、トウレール、ソーラーパネルアーチ、エンジン等全てをデッキ裏で電線でつないで、一つの大きな金属の塊を作ってアースとした。
電波は結構飛んだと思う。

2) 国際VHF無線機 : ICOM 製 M504J (25W)
アンテナは、ソーラーパネルアーチに取付け。
3) イリジウム衛星電話機 : Iridium GO


自分が普段使っているスマートフォンが、Wi - Fi の船内 LAN でつながってハンドセットになり、電話もメールも陸に居る時と同じ感覚で出来た。
本体は米国の、PredictWind 社から購入し、通信契約はやはり米国の SatphoneStore 社と結んだ。
詳細は、PredictWind と SatphoneStore のホームページ参照。
通信契約の内容は、「GO Unlimited」 という料金プランで、データ使い放題で、無料通話が5分間分付いて、税込で 1ヶ月 130 ドルほど。
ただし電話は、無料通話分を超えた時の通話料が 1 分間 10 ドルほどと、かなり高額だったので、ほとんど使わなかった。
契約した料金プランの、データ使い放題は、航跡自動表示サービスを依頼する時は、位置情報を SMS で頻繁に自動発信するので必要。
最近 SatphoneStore 社のホームページをのぞくと、料金プランの 「GO Unlimited」 は、データ使い放題で、無料通話が 150 分間分と大幅に増えていて、しかも、150 分の無料通話分を超えた後の通話料は、1 分間 1. 09 ドルと信じられないほど安くなっているのに、料金は税込で 1 ヶ月 130 ドルほどと変わってなかった。
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その2)
2016-10-10
2016年10月10日(日) 11時 記
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その2)
目 次
1.ヨットの紹介 (2016年10月5日のブログ参照)
= 本日紹介分の目次 =
2.船体の準備
============
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
2. 船体の準備
1) セール新調
2014年3月に、三浦海岸の前田セールさんで、メインセールとジブセールを新調した。セールクロスは、太平洋横断に使用することを告げて、前田さんに決めてもらった。
ダブルステッチで丁寧に仕上げてもらった。
丈夫なセールに仕上がっていて、航海中セールのトラブルは皆無だった。
安価で製作して頂き感謝している。

(1) ジブセール : ファーリングジェノア、130%

(2) インナーステースル : ストームジブセールをセットした。
インナーステーを後付けで取付けて、ファーラーを取付けた。
セールはファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブを持っていたので、それをファーラー用に改造して使用した。


どうしてもストームジブが欲しかったのでインナーステーを取付けた。
ファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブは、荒天時にそんな悠長なことはしてられないので使用できないと思った。
しかし、今回の航海でストームジブが無かったら困ったかと言うと、そうではなかったように思う。
自分のヨットは、強風時はクローズドリーチ(クローズホールドからアビームの間)ではジブセールが無いと走らない。
それならと、風速17~18 m/s の時に、2ポイントリーフのメインセールに加えてストームジブを出すと、オーバーキャンバスで走れなかった。
今回ストームジブがあって良かったと思ったのは、風速13~14 m/s くらいの時にクローズドリーチで走った時で、ジブセールをフット長さの40 % ほど出して走るより、ストームジブで走った方が乗り心地が良かった。
これは、スピードが落ちたために波当たりがソフトになったためと思うが、長時間激しい波当たりを受けながら走ることは船体と乗員に取って好ましくない。
インナーステーを取り付けたために、ランナー(ランニングバックステー)も取り付けた。
ランナーはインナーステースル(ストームジブ)を使う時に、マストのインナーステー取り付け部を風上後方に引っ張るために使うのだが、使わない時は結構邪魔になった。
使わない時の固縛場所によっては、クローズホールドの時にジブセールに干渉し、追っ手の時はブームに当たるので、その都度固縛位置を変えた。
(3) メインセール

1 ポイントリーフ : ラフの長さの 80 %

1 ポイントに落とすことでかなりの風速範囲で安心していられた。
2 ポイントリーフ : ラフの長さの 50 %

2 ポイントリーフのメインセールは有効で、強風下の風下航でも安心していられたし、風向に対して 70 ~ 80 度の角度で逆ジブを使わずにヒーブツーすることもできた。
2 ポイントリーフは、形状は異なるがストームトライスルとほぼ同じセール面積になるので、相当な風でもヒーブツーで凌ぐことが出来る感触を得た。
(4) メインセールとジブセールの組み合わせ



ジブセールのフットに、フットの長さの 40 % まで 10 % きざみで印を付けておいたので、セール面積を簡単に把握出来て良かった。

メインセール、ジブセールとも最小の組み合わせだが、クローズドリーチでは風速15 m/s くらいが限度のように感じられた。
・リーフ方法 :
ラフ側、リーチ側を別々に固定する通常方式。
シングルライン方式を採用して、コクピットでリーフ作業をしたかったが、ロープの取り回しが困難だったので止めた。
メインセールのラフスライダーに抵抗の少ないタイプを使用して、シングルライン方式が無理なく採用出来れば、追手で走らせたままコクピットでリーフ作業ができるので、安全性が飛躍的に向上する。
追手で走っている時は、風が強くなっていることに気が付くのが遅れがちで、リーフしようと思った時はすでに波も高くなっていることが多いので、ヨットを停めて横っ腹を波に向けて、マストまで行って行うリーフ作業は、大変かつ危険を伴う。
2) ハードドジャー取付け
日本周航時はソフトドジャーを取付けていたが、ドジャーの横を通る時にハンドグリップが無かったので怖かった。
何とかソフトドジャートップの横にハンドグリップを取付けることを検討したが、かなり面倒な改造になるので、思い切って新たにハードドジャーを造ってもらった。
簡易雌型の製作。


ドジャートップ全周にハンドグリップを取付けたことにより、安全性が飛躍的に向上した。

サンフランシスコ、ハワイで現地のヨットを見ると、ソフトドジャーでもほぼ全てにハンドグリップが取付けてあった。
今回の航海では、ハンドグリップさえあればソフトドジャーでも問題無かったが、それはあくまでも結果論で、激しく波をかぶったり、横倒しになった時は、ソフトドジャーは変形するかもしれないと思う。
3) ジャイブプリベンター取付け
1/4 テークルで左右舷別々に取付けて、コクピットまでリードした。

強風時の真追手でも安心していられ、強風下のジャイブも安全に行えて非常に有効だった。
4) 自動操舵装置
(1) ウインドベーン : 米国Scanmar製、Monitor



ウインドベーンは非常に有効で、全航海時間の 98 % ほど使用した。
強風時の真追手、クオーターリーでも全く不安なく使用できた。また、荒天時にヒーブツー状態で凌いだ時にも使用できた。
唯一弱点は、風が 4 m/s 以下になると作動が不安定になり使えなくなることだが、幸いそれほど長い間弱風状態が続くことはなかった。
エアベーンの角度調整は船尾まで行かないと出来ないが、角度調整をキャビン内から長いロープを使って出来るようにしておけば、船尾まで行かずに済むので、波をかぶる恐れが無くなり、安全性が増すと同時に快適になる。

ウインドベーン無くして長距離の単独航海は不可能と感じた。
(2) オートパイロット : Raymarine 製 ST - 2000 x 4 台

日本周航時から信頼性はかなり低く、すぐに壊れるので、頻繁に修理に出していた。
1 台目は出航そうそうに、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になり、2 台目もサンフランシスコ到着のかなり前に、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になった。
3 台目が一時作動が不安定になったが、何とか帰国まで使えた。
弱風時や出入港時等エンジンを使う時は、オートパイロットは必需品だった。
壊れ易いので、予備をたくさん積むことになった。
5) 落水防止対策
ソーラーパネルアーチの支柱を利用して、船尾部とコクピット横にロープを巡らした。

落水の恐怖感は大幅に減少し、立ち小便をする時も安心だった。
6) スプレッダーライト(両舷)
夜間作業が多く必需品だった。
夜間、ウインドベーンのエアベーンを調整する時に、船尾のコクピット周りに照明が必要だった。
ソーラーパネルの裏面に作業灯を取付けることが出来たのだが、出航前のテスト航海の時には必要性に気が付かなかった。
7) 清水タンク増量 : 70 L (オリジナル) ---> 120 L
オリジナルは 70 リッターだったが、日本周航中にすぐに無くなることに気が付いたので 120 リッターに増量した。
8) 燃料タンク増量 : 30 L (オリジナル) ---> 110 L
オリジナルは 30 リッターと小さかったので、新艇購入時に 60 リッターにしたが、まだ小さかったので、110 リッターに増量した。
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その2)
目 次
1.ヨットの紹介 (2016年10月5日のブログ参照)
= 本日紹介分の目次 =
2.船体の準備
============
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
2. 船体の準備
1) セール新調
2014年3月に、三浦海岸の前田セールさんで、メインセールとジブセールを新調した。セールクロスは、太平洋横断に使用することを告げて、前田さんに決めてもらった。
ダブルステッチで丁寧に仕上げてもらった。
丈夫なセールに仕上がっていて、航海中セールのトラブルは皆無だった。
安価で製作して頂き感謝している。

(1) ジブセール : ファーリングジェノア、130%

(2) インナーステースル : ストームジブセールをセットした。
インナーステーを後付けで取付けて、ファーラーを取付けた。
セールはファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブを持っていたので、それをファーラー用に改造して使用した。


どうしてもストームジブが欲しかったのでインナーステーを取付けた。
ファーリングジブにかぶせてセットするタイプのストームジブは、荒天時にそんな悠長なことはしてられないので使用できないと思った。
しかし、今回の航海でストームジブが無かったら困ったかと言うと、そうではなかったように思う。
自分のヨットは、強風時はクローズドリーチ(クローズホールドからアビームの間)ではジブセールが無いと走らない。
それならと、風速17~18 m/s の時に、2ポイントリーフのメインセールに加えてストームジブを出すと、オーバーキャンバスで走れなかった。
今回ストームジブがあって良かったと思ったのは、風速13~14 m/s くらいの時にクローズドリーチで走った時で、ジブセールをフット長さの40 % ほど出して走るより、ストームジブで走った方が乗り心地が良かった。
これは、スピードが落ちたために波当たりがソフトになったためと思うが、長時間激しい波当たりを受けながら走ることは船体と乗員に取って好ましくない。
インナーステーを取り付けたために、ランナー(ランニングバックステー)も取り付けた。
ランナーはインナーステースル(ストームジブ)を使う時に、マストのインナーステー取り付け部を風上後方に引っ張るために使うのだが、使わない時は結構邪魔になった。
使わない時の固縛場所によっては、クローズホールドの時にジブセールに干渉し、追っ手の時はブームに当たるので、その都度固縛位置を変えた。
(3) メインセール

1 ポイントリーフ : ラフの長さの 80 %

1 ポイントに落とすことでかなりの風速範囲で安心していられた。
2 ポイントリーフ : ラフの長さの 50 %

2 ポイントリーフのメインセールは有効で、強風下の風下航でも安心していられたし、風向に対して 70 ~ 80 度の角度で逆ジブを使わずにヒーブツーすることもできた。
2 ポイントリーフは、形状は異なるがストームトライスルとほぼ同じセール面積になるので、相当な風でもヒーブツーで凌ぐことが出来る感触を得た。
(4) メインセールとジブセールの組み合わせ



ジブセールのフットに、フットの長さの 40 % まで 10 % きざみで印を付けておいたので、セール面積を簡単に把握出来て良かった。

メインセール、ジブセールとも最小の組み合わせだが、クローズドリーチでは風速15 m/s くらいが限度のように感じられた。
・リーフ方法 :
ラフ側、リーチ側を別々に固定する通常方式。
シングルライン方式を採用して、コクピットでリーフ作業をしたかったが、ロープの取り回しが困難だったので止めた。
メインセールのラフスライダーに抵抗の少ないタイプを使用して、シングルライン方式が無理なく採用出来れば、追手で走らせたままコクピットでリーフ作業ができるので、安全性が飛躍的に向上する。
追手で走っている時は、風が強くなっていることに気が付くのが遅れがちで、リーフしようと思った時はすでに波も高くなっていることが多いので、ヨットを停めて横っ腹を波に向けて、マストまで行って行うリーフ作業は、大変かつ危険を伴う。
2) ハードドジャー取付け
日本周航時はソフトドジャーを取付けていたが、ドジャーの横を通る時にハンドグリップが無かったので怖かった。
何とかソフトドジャートップの横にハンドグリップを取付けることを検討したが、かなり面倒な改造になるので、思い切って新たにハードドジャーを造ってもらった。
簡易雌型の製作。


ドジャートップ全周にハンドグリップを取付けたことにより、安全性が飛躍的に向上した。

サンフランシスコ、ハワイで現地のヨットを見ると、ソフトドジャーでもほぼ全てにハンドグリップが取付けてあった。
今回の航海では、ハンドグリップさえあればソフトドジャーでも問題無かったが、それはあくまでも結果論で、激しく波をかぶったり、横倒しになった時は、ソフトドジャーは変形するかもしれないと思う。
3) ジャイブプリベンター取付け
1/4 テークルで左右舷別々に取付けて、コクピットまでリードした。

強風時の真追手でも安心していられ、強風下のジャイブも安全に行えて非常に有効だった。
4) 自動操舵装置
(1) ウインドベーン : 米国Scanmar製、Monitor



ウインドベーンは非常に有効で、全航海時間の 98 % ほど使用した。
強風時の真追手、クオーターリーでも全く不安なく使用できた。また、荒天時にヒーブツー状態で凌いだ時にも使用できた。
唯一弱点は、風が 4 m/s 以下になると作動が不安定になり使えなくなることだが、幸いそれほど長い間弱風状態が続くことはなかった。
エアベーンの角度調整は船尾まで行かないと出来ないが、角度調整をキャビン内から長いロープを使って出来るようにしておけば、船尾まで行かずに済むので、波をかぶる恐れが無くなり、安全性が増すと同時に快適になる。

ウインドベーン無くして長距離の単独航海は不可能と感じた。
(2) オートパイロット : Raymarine 製 ST - 2000 x 4 台

日本周航時から信頼性はかなり低く、すぐに壊れるので、頻繁に修理に出していた。
1 台目は出航そうそうに、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になり、2 台目もサンフランシスコ到着のかなり前に、電気(制御)系統のトラブルで使用不能になった。
3 台目が一時作動が不安定になったが、何とか帰国まで使えた。
弱風時や出入港時等エンジンを使う時は、オートパイロットは必需品だった。
壊れ易いので、予備をたくさん積むことになった。
5) 落水防止対策
ソーラーパネルアーチの支柱を利用して、船尾部とコクピット横にロープを巡らした。

落水の恐怖感は大幅に減少し、立ち小便をする時も安心だった。
6) スプレッダーライト(両舷)
夜間作業が多く必需品だった。
夜間、ウインドベーンのエアベーンを調整する時に、船尾のコクピット周りに照明が必要だった。
ソーラーパネルの裏面に作業灯を取付けることが出来たのだが、出航前のテスト航海の時には必要性に気が付かなかった。
7) 清水タンク増量 : 70 L (オリジナル) ---> 120 L
オリジナルは 70 リッターだったが、日本周航中にすぐに無くなることに気が付いたので 120 リッターに増量した。
8) 燃料タンク増量 : 30 L (オリジナル) ---> 110 L
オリジナルは 30 リッターと小さかったので、新艇購入時に 60 リッターにしたが、まだ小さかったので、110 リッターに増量した。
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その1)
2016-10-05
2016年10月5日(水) 15時 記
太平洋横断往復航海の準備と実際 (その1)

Ⅰ.前書き
1.略 歴
1950年 8月 東京で生まれる。現在は千葉市在住。
1960年 8月 10歳の時、猪苗代湖で、生まれて初めてヨットに出会う。
1962年 8月 12歳の時、堀江謙一さんの太平洋単独横断を知る。
1969年 4月 大学入学。ヨット部に入りヨットを始める。
1990年 3月 40歳の時、中古クルーザーヨット『ヤマハ25MkⅡ』購入。
横浜市金沢区の平潟湾に係留、金沢八景マリンクラブに所属。
1998年 9月 48歳の時、現在のエスプリ・ディユ・バン購入。
2011年 12月 61歳で定年退職。
2012年 3月 日本周航に出る。
清水~紀伊半島~大阪湾~瀬戸内海~関門海峡~九州(反時計回り)
~瀬戸内海~沖縄
2013年 3月 日本周航継続。
沖縄~九州西岸~日本海~北海道(時計回り)~日本海~関門海峡
~四国西岸、南岸~紀伊半島~清水
2014年 4月 日本周航継続(トレーニングとシェイクダウンを兼ねる)。
清水~八丈島~小笠原~南大東島~沖縄~函館~東北東岸~清水
2015年 5月 太平洋横断航海へ出る。
2.太平洋横断往復航海の日程
2015年5月21日 静岡県清水港の富士山羽衣マリーナから出航
2015年7月13日 サンフランシスコ到着
アラメダのグランドマリーナに1ヶ月間滞在
2015年8月14日 ハワイへ向けて出航
2015年9月 6日 オアフ島ホノルル到着
ホノルルのアラワイボートハーバーに7ヶ月間滞在
2016年4日 3日 清水へ向けて出航
2016年5月10日 富士山羽衣マリーナ到着
3.サンフランシスコを目指した理由
1962年 8月、堀江謙一さんが太平洋単独横断に成功し、サンフランシスコに入港した。
当時12歳だったが、大きな影響を受け、将来自分もヨットをやりたいと強く思った。
大学に入ってヨットを始めた時、自分もいつかは太平洋を横断したいと思った。
したがって、堀江さんと同じサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを目指した。

4.何故シングルハンドか
1)家内と二人で出掛けることが理想と考えたが、船酔いする、陸が見えないと怖い、航海中暇な時に何もすることが無いなどの理由で断られた。
2)艇長として、外洋で同乗者の命を守り切る自信が無い。
自分自身外洋へ出た経験がなく、ベテランセーラーという訳でもないので、危険回避の判断を誤ったり、同乗者を守るために判断が鈍ったり、あるいは自分自身も危険に巻き込まれることがあり得ると思った。
3)どんなに仲の良い仲間と出掛けても、狭い船内で長期間仲良く暮らして行く自信が無い。
4)同乗者のスキルにもよるが、進路、危険回避の判断が分かれる場合がある。
その場合、生死を分けることもあるので、全て自分で判断して、その結果は全て自分で負うべきと考えた。
自分で下した判断で、同乗者を苦しめることはストレスになる。一方、同乗者の下した判断に従った結果、自分も苦しむことになったら辛いであろうと考えた。
II.本文
以下は、今回太平洋を渡るに当たって、自分なりに考えたり、調べたり、いろいろな方々から助言を頂いたりしながら行った準備とその結果です。
略歴欄、シングルハンドの理由欄でご紹介しました通り、自分自身外洋航海の経験は皆無であり、日本周航中に荒天に遭遇したこともありません。
したがって、ここで紹介する内容は単なる一つの例と考えて下さい。
うまく行ったケースでも、たまたまうまく行ったかも知れず、違うヨットで、気象、海象条件が変われば、全く異なる結果になることがあると思います。
また、自分は臆病者で、思い込みが強いので、初めて外洋へ出るに当たって、過剰とも思える準備をしている場合がありますので、適宜割引してお読み下さい。
文章が冗長で、長文になってしまいましたことをお詫びします。
= 本日紹介分の目次 =
1.ヨットの紹介
============
2.船体の準備
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
1.ヨットの紹介
船 名 : TSUYOTAKA(つよたか)
二人の息子の名前、長男 剛(つよし)、次男 喬(たかし)から命名。
建 造 所 : ニュージャパンヨット(株)、静岡県牧之原市(御前崎の近く)
艇 種 名 : Esprit Du Vent 30ft(エスプリ・ディユ・バン)
進 水 : 1998年9月
主 要 目
全 長 : 8. 98 m
水線長 : 7. 50 m
幅 : 3. 10 m
吃 水 : 1. 80 m (出航時は、1. 90 mほどになっていたと思われる)
排水量 : 2, 850 kg(出航時は、5, 800 kgほどになっていたと思われる)
バラスト : 1, 250 kg
エンジン : ヤンマー2GM、シャフトドライブ、2翼固定プロペラ
清水タンク : 120 L
燃料タンク : 110 L









太平洋横断往復航海の準備と実際 (その1)

Ⅰ.前書き
1.略 歴
1950年 8月 東京で生まれる。現在は千葉市在住。
1960年 8月 10歳の時、猪苗代湖で、生まれて初めてヨットに出会う。
1962年 8月 12歳の時、堀江謙一さんの太平洋単独横断を知る。
1969年 4月 大学入学。ヨット部に入りヨットを始める。
1990年 3月 40歳の時、中古クルーザーヨット『ヤマハ25MkⅡ』購入。
横浜市金沢区の平潟湾に係留、金沢八景マリンクラブに所属。
1998年 9月 48歳の時、現在のエスプリ・ディユ・バン購入。
2011年 12月 61歳で定年退職。
2012年 3月 日本周航に出る。
清水~紀伊半島~大阪湾~瀬戸内海~関門海峡~九州(反時計回り)
~瀬戸内海~沖縄
2013年 3月 日本周航継続。
沖縄~九州西岸~日本海~北海道(時計回り)~日本海~関門海峡
~四国西岸、南岸~紀伊半島~清水
2014年 4月 日本周航継続(トレーニングとシェイクダウンを兼ねる)。
清水~八丈島~小笠原~南大東島~沖縄~函館~東北東岸~清水
2015年 5月 太平洋横断航海へ出る。
2.太平洋横断往復航海の日程
2015年5月21日 静岡県清水港の富士山羽衣マリーナから出航
2015年7月13日 サンフランシスコ到着
アラメダのグランドマリーナに1ヶ月間滞在
2015年8月14日 ハワイへ向けて出航
2015年9月 6日 オアフ島ホノルル到着
ホノルルのアラワイボートハーバーに7ヶ月間滞在
2016年4日 3日 清水へ向けて出航
2016年5月10日 富士山羽衣マリーナ到着
3.サンフランシスコを目指した理由
1962年 8月、堀江謙一さんが太平洋単独横断に成功し、サンフランシスコに入港した。
当時12歳だったが、大きな影響を受け、将来自分もヨットをやりたいと強く思った。
大学に入ってヨットを始めた時、自分もいつかは太平洋を横断したいと思った。
したがって、堀江さんと同じサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを目指した。

4.何故シングルハンドか
1)家内と二人で出掛けることが理想と考えたが、船酔いする、陸が見えないと怖い、航海中暇な時に何もすることが無いなどの理由で断られた。
2)艇長として、外洋で同乗者の命を守り切る自信が無い。
自分自身外洋へ出た経験がなく、ベテランセーラーという訳でもないので、危険回避の判断を誤ったり、同乗者を守るために判断が鈍ったり、あるいは自分自身も危険に巻き込まれることがあり得ると思った。
3)どんなに仲の良い仲間と出掛けても、狭い船内で長期間仲良く暮らして行く自信が無い。
4)同乗者のスキルにもよるが、進路、危険回避の判断が分かれる場合がある。
その場合、生死を分けることもあるので、全て自分で判断して、その結果は全て自分で負うべきと考えた。
自分で下した判断で、同乗者を苦しめることはストレスになる。一方、同乗者の下した判断に従った結果、自分も苦しむことになったら辛いであろうと考えた。
II.本文
以下は、今回太平洋を渡るに当たって、自分なりに考えたり、調べたり、いろいろな方々から助言を頂いたりしながら行った準備とその結果です。
略歴欄、シングルハンドの理由欄でご紹介しました通り、自分自身外洋航海の経験は皆無であり、日本周航中に荒天に遭遇したこともありません。
したがって、ここで紹介する内容は単なる一つの例と考えて下さい。
うまく行ったケースでも、たまたまうまく行ったかも知れず、違うヨットで、気象、海象条件が変われば、全く異なる結果になることがあると思います。
また、自分は臆病者で、思い込みが強いので、初めて外洋へ出るに当たって、過剰とも思える準備をしている場合がありますので、適宜割引してお読み下さい。
文章が冗長で、長文になってしまいましたことをお詫びします。
= 本日紹介分の目次 =
1.ヨットの紹介
============
2.船体の準備
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の悪化
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集
1.ヨットの紹介
船 名 : TSUYOTAKA(つよたか)
二人の息子の名前、長男 剛(つよし)、次男 喬(たかし)から命名。
建 造 所 : ニュージャパンヨット(株)、静岡県牧之原市(御前崎の近く)
艇 種 名 : Esprit Du Vent 30ft(エスプリ・ディユ・バン)
進 水 : 1998年9月
主 要 目
全 長 : 8. 98 m
水線長 : 7. 50 m
幅 : 3. 10 m
吃 水 : 1. 80 m (出航時は、1. 90 mほどになっていたと思われる)
排水量 : 2, 850 kg(出航時は、5, 800 kgほどになっていたと思われる)
バラスト : 1, 250 kg
エンジン : ヤンマー2GM、シャフトドライブ、2翼固定プロペラ
清水タンク : 120 L
燃料タンク : 110 L









太平洋横断往復航海を終えて
2016-10-04
2016年10月4日(火) 16時 記
昨年の5月21日に静岡県の清水港から出航し、サンフランシスコとハワイに寄港した後、今年の5月10日に清水港に戻り、ほぼ一年間にわたる太平洋横断往復航海が終了しました。
長年の夢だった太平洋横断航海を無事終えることが出来てほっとしています。
そんな時に、長距離航海懇話会から今回の航海のために行った準備と、それらの結果を振り返って講演してほしいとの依頼を受けました。
講演は、先週の10月1日(土)に終了しましたが、出航前に行った準備とその結果などを、『太平洋横断往復航海の準備と実際』として、航海中の写真なども含めてまとめる作業を継続して行っています。
出来上がり次第、その内容をこの場でご紹介して行きますので、これから外洋へ出る方々の一助になれば幸いです。
こんな内容でまとめています。
1.ヨットの紹介
2.船体の準備
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の低下
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集(一部をご紹介します)












昨年の5月21日に静岡県の清水港から出航し、サンフランシスコとハワイに寄港した後、今年の5月10日に清水港に戻り、ほぼ一年間にわたる太平洋横断往復航海が終了しました。
長年の夢だった太平洋横断航海を無事終えることが出来てほっとしています。
そんな時に、長距離航海懇話会から今回の航海のために行った準備と、それらの結果を振り返って講演してほしいとの依頼を受けました。
講演は、先週の10月1日(土)に終了しましたが、出航前に行った準備とその結果などを、『太平洋横断往復航海の準備と実際』として、航海中の写真なども含めてまとめる作業を継続して行っています。
出来上がり次第、その内容をこの場でご紹介して行きますので、これから外洋へ出る方々の一助になれば幸いです。
こんな内容でまとめています。
1.ヨットの紹介
2.船体の準備
3.電源設備
4.航海計器
5.無線設備
6.法定備品
7.その他の準備
8.装備の二重化
9.復原性の低下
10.荒天時の対策
11.免許、資格等の準備
12.チャート
13.気象情報の入手
14.船内の生活
15.食糧、清水、燃料、医薬品
16.出航日、帰国予定時期の決定
17.航海コース
18.航海中のサポート等
19.出港手続き、入港手続き
20.サンフランシスコ、ハワイでのサポート
21.航海中のトラブル
22.航海の総括
23.航海中の写真集(一部をご紹介します)












ヨット「カモメ」さんがハワイに到着したようです
2016-08-05